老人ホームの特徴や99歳になっても利用できる施設の選び方について

高齢者介護は社会全体が取り組む課題とされています。特に老人ホームなどの入居型介護施設は数が増えている一方、介護サービスの質が問題視されている事実は否定できません。また、何歳まで入居できるかなど、利用に関する疑問点が明確にされていないのも大きな問題と言えるでしょう。

ここでは日本における高齢者介護の実態についてお伝えします。

老人ホームと個室の関係について考えよう

高齢者介護の意識変化について

高齢者介護が社会全体の課題と見なされるようになったのは近代になってからと言われています。それまでは高齢者の世話は家族が行うのが当たり前とされていました。また、平均寿命が50代から60代と短かったことも高齢者介護が軽視されていた理由とされています。

食糧生産や医療の進歩によって寿命が延び、70代から80代まで長生きすることが普通になった現在では高齢者介護は決して他人事ではありません。自分自身が介護する側、そしてされる側になるのが当たり前という考えを持つことが重要と言えます。

日本で家族ではない第三者が事業として高齢者介護を行うようになったのは19世紀末とされています。キリスト教の女性伝道師が民家を改装して始めた養老院が日本最初の老人ホームと位置付けられています。この養老院は女性限定でしたが、これは当時の女性が社会的に自立することが難しかったのが理由です。

特に夫に先立たれたり離婚した女性は自分一人で暮らしを成り立たせることが非常に困難であり、家も財産も失ってしまうケースは決して稀ではなかったのです。このように困窮した女性を救うことが養老院の設立に繋がったと言われています。

後に幾つもの寺社仏閣や病院などが養老院を運営するようになりましたが、これらはいずれも個人によるものです。1950年に生活保護法が制定されたことにより、ようやく国による高齢者介護の制度化が実現しました。しかし、当時の高齢者介護はあくまでも生活困窮者を対象にした救済でした。

現在のように体調管理を適切に行い、健康的な暮らしを営むことを目的とした高齢者介護が行われるようになったのは1963年に老人福祉法が制定されてからです。

老人ホームという名の施設が公的に認められたのも老人福祉法が根底にあります。

高齢者介護施設の種類

老人ホームは高齢者介護施設の代名詞になっていますが、ひと口に老人ホームと言ってもその種類は様々です。軽費老人ホームは古くから抱かれているイメージにもっとも近い施設とされています。身寄りがない人や経済的な事情などで家族との同居が難しい高齢者を対象とした施設であり、健康状態に問題がない人でも入居対象になっているのが特徴です。

軽費老人ホームはさらにA型やB型などに区別され、それぞれ入居条件が異なります。毎日の食事の特徴や生活面での便宜を図るのが主なサービス内容ですが、一方で要介護者を対象にした介助作業は扱わない所も少なくありません。

専門知識や技能を持つ人による介助作業を必要とする高齢者は他の介護施設を利用することになります。特別養護老人ホームは要介護の高齢者を対象にした介護施設です。要介護3以上と認定された高齢者が入居対象であり、身体への介助作業を中心とした自立支援が主な介護サービスになっています。

特別の名称を使わない養護老人ホームは介護の必要性ではなく、経済や環境などの理由で在宅での生活が困難な高齢者を対象にしている介護施設です。困窮した高齢者の社会復帰を目的としていることから、入居条件は自立した高齢者とされています。

老人ホームの一種として扱われるグループホームは認知症を患っている人を対象にした施設であり、提供されるサービスも認知症ケアが中心です。

入居できる年齢の制限

老人ホームは名称の通り、老人と見なされる高齢者を対象にした施設です。

一般的には60歳から65歳が入居できる下限の年齢制限になっていますが、心身の健康状態によっては60歳未満でも入居可能としている施設は少なくありません。

一方で基本的に年齢の上限は設けられていないことから、80代や90代に至った高齢者でも新規に入居することは可能です。しかし、受け入れ年齢は法律で明確に決められていることではありません。あくまでもそれぞれの施設が独自に設けたルールであり、年齢を理由に入居の拒否や退去の勧告を行うのは施設の自由です。

一方で年齢だけを理由にした拒否や退去は一般的ではなく、高齢者本人による迷惑行為や施設利用費の滞納など、他の要因が主となるのが普通になっています。要介護者への介助作業を行わない老人ホームでは心身の健康状態を理由に退去を求めることはありますが、入居時とほぼ変わらない状態であれば年齢の上限は存在しないと言えるでしょう。

看取りを行う施設も少なくないことから、99歳などの高齢に至るまで入居は可能です。

老人ホームを選ぶ際の注意点

老人ホームは入居する高齢者にとって終の棲家になるケースが少なくないことから、本人の希望を第一に考えることが大切です。しかし、本人の希望と介護施設のサービスが必ずしも合致するとは限らないため、施設選びは慎重に行う必要があります。

高齢者と施設職員との相性、施設の利用費なども重要な判断基準なので、施設の知名度や立地環境などで安易に即決せず、複数の施設を比較しながら冷静に考慮する姿勢が大切と言えるでしょう。しかし、施設が満室で順番待ちになっている地域もあることから、慎重でありながらも速やかに決断する姿勢が求められます。

施設職員と良好な関係を築くことが肝心

老人ホームを快適に利用するなら施設職員と仲良くすることが何よりも重要と言えるでしょう。入居者を分け隔てなく介護するのが施設の運営方針ですが、職員と入居者との間に好き嫌いの相性が生じる事実は否定できません。

施設のサービスは高品質でも職員との相性が悪いと快適な利用は難しくなります。入居する高齢者はもちろん、家族も施設職員と良好な関係を構築することが肝心です。この老人ホームではどのようなサービスを受けられるのか、施設職員は何ができるのかを正しく認識し、真摯な姿勢で接することが良好な関係を築く秘訣です。

何歳になっても利用できる老人ホームを選ぶには正しい情報収集が不可欠

老人ホームの種類は多彩であり、提供できるサービスや入居条件がそれぞれ異なります。原則、入居した高齢者は99歳などの高齢になっても利用を続けることは可能ですが、高齢者と施設職員の相性など人同士の関係は軽視できません。

いつまでも快適な暮らしを続けるには老人ホーム選びに気を配る他、入居する高齢者の希望と施設のサービス内容を合致させるための情報収集が欠かせないと言えます。